知的障害と障害年金
知的障害(精神発達遅滞)とは、
発達期までに生じた知的機能の障害によって、知的能力と社会生活への適応機能が遅れた水準にとどまり、
日常生活において困難を抱えている状態をいいます。持続的に援助が必要な障害です。
知的障害を持つと、18歳くらいまでの発達期に認知能力の遅れなどにより、
読み書きや計算などの学習、抽象的概念や言葉を理解しコミュニケーションを取るなどが苦手になります。
また日常生活や社会生活の適応、臨機応変の対応、同時に複数の課題をこなすなどが困難なため「生き辛さ」を顕在化してしまいます。
知的障害は個人差があり、一般的にIQによって以下の4つのレベルに分類されます。
軽度知的障害(軽度精神遅滞)
- IQ範囲: おおよそ50~70
- 学習の速度は遅いが、基本的な学問技能を習得することができる
- 小学校程度の学力に達することができる
- 日常生活においては比較的自立して行動できる
- 複雑なタスクや高度な抽象的思考には困難を伴う
中度知的障害(中等精神遅滞)
- IQ範囲: おおよそ35~49
- 基本的な読書や書き込み、簡単な計算は可能だが、学習進度はさらにゆっくり
- 社会的なルールや生活習慣の習得には時間がかかる
- 日常生活でのサポートが必要
- 簡単な作業には従事できる
重度知的障害(重度精神遅滞)
- IQ範囲: おおよそ20~34
- 言語や概念理解が非常に制限されることが多い
- 基本的な身の回りのことを自分だけで行うのは難しく、絶え間ないサポートが必要
- 行動やコミュニケーションが制限される
最重度知的障害(最重度精神遅滞)
- IQ範囲: 20未満
- 言語および非言語コミュニケーションがほとんどできないことが多い
- 基本的な日常生活動作はほとんどすべてサポートが必要
- 多くのケースで身体的な障害と医療的な条件が伴う、重複障害がみられる
知的障害で障害年金を受け取るためのポイント
通常、障害年金を受給するためには、「初診日要件」と「保険料納付要件」を満たしている必要があります。
しかし、知的障害はおおむね18歳の発達期までにあらわれる障害のため、
上記のふたつの要件は加味しなくても良いことになっています。大人になってから知的障害と診断された場合も同じです。
知的障害での障害年金受給には認定基準があります。障害の状態によって重い方から、1級、2級、3級となりますが、
障害基礎年金での申請になりますので3級では障害年金は支給されません。
1級:食事や身の回りのことを行うのに全面的な援助が必要であり、且つ会話による意思疎通が不可能か著しく困難である。
日常生活が困難で常時援助を必要とする。
2級:食事や身の回りのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、且つ会話による意思疎通が簡単なものに限られる。
日常生活にあたって援助が必要。
3級:労働が著しい制限をうける。(障害年金は支給されない)
知的障害の認定は、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を鑑みて総合的に判断されます。
知的障害で障害年金を請求(申請)する方法
知的障害で障害年金を申請するときは、「精神の障害用」の診断書を使用します。
2016年(平成28年)に運用が開始された『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』では、
「精神障害用」診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」及び「日常生活の程度」に応じて等級の目安が定められています。診断書と照らし合わせてご確認ください。
手続きの進め方や大まかな流れは以上の通りです。
- 医師に診断書を書いてもらう。
- 「病歴・就労状況等申立書」を作成する。
- その他の必要書類を揃える。
- 請求書類を提出する。
知的障害で障害年金を請求するときの注意点
日常生活の自立状況が診断書に反映されているか確認しましょう。
知的障害の場合はご両親が手続きするケースが多いと思われます。
長く暮らしていると自立できていないことが“当たり前”になってしまっている可能性があります。医師に診断書を依頼するときは客観的に見て、お子さまができること、できないことを正確に伝えるよう心掛ける必要があります。
知的障害は出生日が初診日として扱われます。そのため「受信状況等証明書」を取得する必要はありません。
知的障害で障害年金の請求(申請)は20歳到達日が認定日になりますので、20歳になったらすぐに請求することができます。
20歳の時点で手続きを行いたい場合は、20歳到達日前後3ヶ月以内の診断書が必要になります。
服薬の必要のない知的障害の方は病院を受診していない場合が多いようです。
障害年金の請求を行う少し前から受診し、医師に生活状況や就労状況を伝えるなどの準備が必要になります。
不安な方や疑問をお持ちの方は、まず専門家へご相談ください
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障害年金は不運にも、障害を負ってしまった方を経済的に支える非常に重要な制度です。
しかしながら、その制度や申請手続きはとても複雑で、申請までに半年や1年もかかってしまったり、申請自体をあきらめてしまう方も少なくありません。
初診日の要件や、等級に応じた申請書類(特に病歴・就労状況等申立書)の作成には、専門的な知識と経験が不可欠です。
「自分の場合はもらえるのだろうか?」
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そんな不安や疑問をお持ちの方は、当事務所の無料相談をご活用ください。
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また、ご自身での申請が難しい場合には、障害年金の申請代行も承ります。
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すどう社労士事務所 須藤 智
そもそも 障害年金とは?
「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、
現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害者のための特別な手当や、事故や労災などによるケガでないと申請できない、と勘違いされている人もいますが、
実は老齢年金と同じ公的年金です。
もちろん知的障害も障害年金の対象傷病です。
障害年金の受給要件を満たしているのに、障害年金を申請しないというのは、
65歳になっても老齢年金を受け取っていないようなものなので、特別な事情のない限りは障害年金の受給をお勧めします。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
申請の前に、条件を満たしているか必ず確認しましょう。
①初診日要件
国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガを医師や歯科医師に診察してもらっていることが必要です。
この診察を初めて受けた日を「初診日」といいます。
健康診断で異常がみつかった日や、誤診を受けた日が初診日とみなされることもありますのでご注意ください。
②保険料納付要件
この保険料納付要件が満たされないと、一生この病気やケガを原因とする障害年金はもらえません。
初診日の前日に、その初診日のある月の前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
保険料を免除されていた期間(全部免除、一部免除)
保険料納付猶予期間(学生納付猶予など)
合算対象期間(いわゆるカラ期間)
20歳以降初診日の前々月までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料が未納でなければ大丈夫です。
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、納めていたものとして扱われます。
上記の要件には当てはまらなくても、令和8年3月31日までに初診日がある場合は、
初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の未納がなければ要件を満たすことができます。
(※20歳前の年金制度に加入していない期間に「初診日」がある場合は、納付要件は不要です)
③障害認定日の要件
障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。
障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日か、1年6か月が経過する前に症状が固定し、それ以上治療の効果が期待できない状態となった日のことです。
例外
下記の状態になった場合も障害認定日として扱われます。
- 咽頭全摘出・・・摘出した日
- 在宅酸素療法・・・常時使用を開始した日
- 人工透析をしている場合・・・人工透析開始から3ヶ月を経過した日
- 心臓ペースメーカー、人工弁、CRT、心臓移植、人工心臓を装着(移植)した場合・・・装着(移植)した日
- 人工肛門造設、尿路変更術・・・造設日(手術日)から起算して6か月経過した日
- 新膀胱・・・造設した日
- 遷延性植物状態・・状態に至った日から3か月を経過した日
- 人工骨頭、人工関節を挿入置換した場合・・・挿入置換した日
- 手足の切断の場合・・・切断された日
- 脳梗塞、脳出血による肢体障害の場合・・・初診日から6ヶ月以上経過後の医師が症状固定と判断した日
この障害認定日に一定の障害状態にあると認められると、その翌月から年金が支給されます。
これを、障害認定日請求と呼び、もし請求が遅れても最大5年遡って支給されます。
そのほか、障害認定日に障害の状態が軽かったとしても、のちに悪化する場合もあります。
この時は「事後重症請求」という形で申請することも可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。
④受給できるのは原則20歳から64歳まで
障害年金は原則20歳から64歳までの人が受給できます。
65歳以上は老齢年金と障害年金のどちらかを選択するか、
または併給調整がかかり、最終的にもらえる金額が変わらない場合があるため注意が必要です。
65歳以上の方はこちら
精神疾患の認定基準
障害年金を受け取るためにはそれぞれの傷病の「認定基準」を超えていることが重要となります。
精神疾患の「認定基準」は以下のように示されています。

これを簡単なイメージで表すと
1級:常時の介助が必要で、日常生活が自力で行えない状態。
2級:日常生活に著しい制限があり、労働ができない状態。
3級(厚生年金のみ):労働に著しい制限が必要な状態。
となります。
またこの障害の状態にあるのは初診日から1年6か月経過した日(認定日)であることが必要です。
『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』
うつ病などの精神疾患は検査数値など客観的な基準を設けにくいため、認定する医師によって等級判定に差が出てしまう場合があります。
そのため、精神疾患に関して、認定基準のほか、ある程度客観的な基準を定めた等級判定ガイドラインが新設されました。
このガイドラインは、診断書裏面にある「日常生活能力の判定」を数値化して出した7項目の平均値と「日常生活能力の程度」をそれぞれ下記の表にあてはめて、障害等級1級~3級の判断を行います。
(※ガイドラインはあくまで目安となっています。)

「日常生活能力の平均判定」の算出方法
診断書裏面にある『日常生活能力の判定』を数値化して出した7項目の平均値です。
それぞれの項目には4つの段階が示されていますが、
比較的、日常生活に支障がないものを1、日常生活に支障が大きいものを4として、合計を7で割って算出します。

「日常生活能力の程度」の算出方法
診断書裏面にある「3日常生活能力の程度」のことです。5段階評価のどれに該当するのかを医師が判断します。

等級判定にあたっての注意点
ガイドラインには「留意事項」として下記のような文言が記載されています。
これをまとめると、ガイドラインが参考にできない場合は診断書などに基づいて総合的な判断がなされるということです。
【「日常生活能力の程度」の評価と「日常生活能力の判定」の平均との整合性が低く、参考となる目安がない場合は、必要に応じて診断書を作成した医師に内容確認をするなどしたうえで、「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」以外の診断書等の記載内容から様々な要素を考慮のうえ、総合評価を行う。】
ガイドラインは障害年金の申請上、大切な指標ですが、あくまで目安とされており、このガイドラインだけで支給・不支給が決定されるわけではないことに注意が必要です。
知的障害で障害年金を受け取るためのポイント
診断書に日常生活が適切に反映されているか確認しましょう
障害年金の申請には診断書が非常に重要となってきます。
障害年金を受給できるか、できないかの9割が診断書で決まるといっても過言ではありません。
ですが、医師は病院で受診をした際の状況で症状の状態を判断しているため、普段の生活状況を加味して診断書を書くことが非常に困難です。
また、うつ病などの精神疾患の場合には比較的体調の良い時に病院に行く傾向があるため、実際の状態よりも軽い症状として診断書を書かれてしまう場合があります。
診断書を書いてもらう際にはご自身の普段の生活状況など、医師から見えない範囲の生活状況も適切に反映されているかを確認しましょう。
初診日がいつかを確認しましょう
初診日の確認は障害年金の申請上、細心の注意が必要な作業です。
特に、精神疾患の場合、精神科の前に、頭痛や不眠といった初期症状で内科を受診している場合があります。
この時、初診日は精神科を受診した日ではなく、内科を受診した日となります。
初診日がいつかによって障害年金を受け取れなくなってしまったり、逆に受け取れるようになる場合もあるため、初診日は正確に把握するようにしましょう。
働いていても障害年金は受給できます
「働いていると障害年金は申請できないですか?」といった質問や、
既に受給している方からは「働いたら年金は支給停止になりますか?」といった疑問はよく耳にします。
ですが、障害年金を受け取るに当たって、「働いている」という事実だけで、不支給となることはありません。
不支給や支給停止になるケースはいずれも、実際の就労状況に左右されます。
障害者雇用枠で働いていたり、軽作業のみを任せてもらっているなど、職場から特別の配慮を受けている、フルタイムや週5日勤務が難しいといった状況にあれば、働いていても障害年金3級を受け取れる可能性があります。
(※障害年金3級は厚生年金の加入者のみ対象です。)
なお20歳前傷病による障害基礎年金を受給している場合は、所得の金額により減額または支給停止になることもあるのでご注意ください。
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